『日産リバイバルプラン(NRP)』の内容と問題点について見てみる

日産リバイバルプラン 企業分析

ゴーン氏の改革は瀕死の日産自動車を助けました

1999年にルノーが日産自動車の株式の36.8%を取得して提携した時、日産自動車は瀕死の状態でした。
グローバルシェアは、91年の6.6%から4.9%まで低下、生産台数も91年の306万台から246万台まで低下していました。
上場企業としては史上ワースト記録となる6,844億円というとてつもない額の赤字を計上していました。
日産リバイバルプランとは、1999年10月18日に日産自動車のカルロス・ゴーンCOOが発表した同社の再建計画です。
各セクションから若手のエース級社員200人を集め、部署を横断して日産の問題点を洗い出しました。わずか3ヵ月で作り上げたのが『日産リバイバルプラン』です。
プラスに転じた1999年の改革着手時には830億円だった営業利益が、2000年には2900億円、01年に4900億円へと大幅に回復しました。
01年の営業利益率は7.9%に跳ね上がりました。98年に2兆1000億円あった有利子負債は01年には4350億円に圧縮されました。

明確な目標設定と現場主義

・ 2000年度に、連結当期利益の黒字化を達成
・ 2002年度に、連結売上高営業利益率4.5%以上を達成
・ 2002年度末までに、自動車事業の連結実質有利子負債を7,000億円以下に削減

これらをすべて1年前倒しで達成しました。

徹底した現場主義

ゴーン氏は常に現場にこだわり、現場の事情、現場からの発案を土台にして変革に取り組みました。現場での社員の声こそが常に重要であることを強く意識していたようです。

大きな犠牲の伴う販売会社の大規模整理

①2001年3月末までに3つの車両組立工場および2002年までに2つのパワートレイン工場での生産を中止し、他工場に集約する。

②現在取引を行っている1,145社におよぶ部品メーカーを、2002年3月までに600社以下とする。また、購買コストを3年間で20%削減する。

③グローバルな人員規模を現在の148,000人から2002年末までに21,000人削減する。その方策として、自然退職やパートタイマーの活用とあわせて、早期退職制度により達成する。

④日本国内では、実績に基づく昇進制度を確立する。また、管理層に対する実績重視の報酬制度を2000年に創設する。

2001年には7工場24プラットフォームを、4工場15プラットフォームに縮小。

販売拠点は約1割の355店舗を閉鎖し、国内の販売会社も約2割に当たる18社を削減した。2万3000人の従業員数削減しました。
大幅な人員削減やサプライヤーの解体など痛みを伴いました。

日産リバイバルプランの最大の問題点

過去に例のない大規模なリストラ

日産の収益向上策のみに主眼をおいたものであり、こういう事態を招いた「経営責任」と「労働者の雇用責任」についてまったく触れていない点です。

「日産180」という3ヵ年経営計画

2002年、ゴーン氏は「日産180」という3ヵ年経営計画を実施しました。180とは次のような具体的な数値目標です。

1:3年間で販売台数を100万台増やす
8:8%の連結売上高営業利益率を達成する
0:負債を0(ゼロ)にする

結果として日産は2002年度に連結売上高営業利益率10.8%を達成し、自動車事業実質有利子負債0も実現しました。

ゴーン氏の経営改革により、日産は国内シェアを20%近くまで回復

往年の名車を再び世に出したのもゴーン氏

フェアレディZの復活

1年、米デトロイトでのモーターショーで「日産は戻ってきた。Zを復活させる」と「フェアレディZ」の復活を宣言しました。翌年、13年ぶりにフルモデルチェンジして発売しました。

GT-Rの復活

排ガス規制をクリアできず、生産中止に追い込まれていた「スカイラインGT-R」の後継車「GT-R」も07年に発売しました。

カルロス・ゴーン氏の略歴(2000年まで)

1954年 ブラジル生まれ
74年 フランス国立理工科大学(Ecole Polytechnique)に入学
78年 フランス国立高等鉱業学校(Ecole des Mines de Paris)を卒業
78年 ミシュラン入社
85年 ブラジル・ミシュラン社長に就任
89年 ミシュランの北米子会社の社長、CEO(最高経営責任者)に就任
90年 北米ミシュランの会長、社長、CEOに就任
96年 ルノーに入社、上級副社長(Executive Vice President)に就任
99年 日産自動車のCOO(最高執行責任者)に就任
2000年 日産自動車の社長に就任

売上・利益・業績

売上高連結:11兆9,511億69百万円
単独:3兆7,506億17百万円
(2018年3月期)
営業利益連結:5,747億60百万円
単独:1,596億48百万円
(2018年3月期)
経常利益連結:7,503億2百万円
単独:1,979億58百万円
(2018年3月期)
純利益連結:7,468億92百万円
単独:1,290億44百万円
(2018年3月期)
純資産連結:5兆6,887億35百万円
(2018年3月期)
総資産連結:18兆7,469億1百万円
(2018年3月期)

歴代会長

初代 川又 克二(かわまた かつじ) 1973年- 1983年 元社長
2代 石原 俊(いしはら たかし)1985年6月- 1992年6月元社長
3代 久米 豊(くめ ゆたか)1992年6月- 1996年6月元社長
4代 塙 義一(はなわ よしかず)1999年6月- 2003年6月元社長
5代 小枝 至(こえだ いたる)2003年6月- 2008年6月同社相談役 元名誉会長
6代 Carlos Ghosn(カルロス ゴーン) 2003年6月- 2018年11月 三菱自動車前会長 ルノー社長兼会長兼任